ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)のソロ分析/メロディだけでジャズのアドリブがここまでできる

楽器の練習

今回はジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)のアルバム、Page Oneより。
ケニー・ドーハムのソロ分析です。

Blue Bossa

曲はBlue Bossa。
曲のタイトルとは異なりブルースっぽさはなく、ボサノバで演奏されることもほとんどありません。

作曲はジャズトランペット奏者のケニー・ドーハム(Kenny Dorham)。
ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)のアルバム、Page Oneが初登場。
今回の耳コピはそのBlue Bossa初登場のアルバム、作曲者ケニー・ドーハム自身のソロ。

ジャズ界隈では非常に有名な曲で、黒本の中にも当然収録されています。
そしてスタンダード曲としては最もシンプルな曲の一つです。


Blue Bossaのメロディとコード。

メロディはほぼスケールを下がってくるのみで、コードの進行もii-V-Iだけ。
ジャズを始めたばかりなら、最初期に学ぶ曲の一つでもあります。

ケニー・ドーハムのソロ

耳コピ楽譜のpdfは以下より。
耳コピ楽譜のpdf: https://isseiec.com/transcriptions

ケニー・ドーハムはメロディの直後に4コーラス(16小節×4)をソロを取っています。
聴けばわかると思いますがそのほとんどが曲のメロディの引用です。

1コーラス目

音符が×で表示したところはフラッタータンギングという特殊奏法です。
巻き舌で『ルルルルル……』と鳴らしながら楽器で演奏したものです。
コーラスの最後の4小節以外、ほとんどがメロディの引用です。

2コーラス目

2コーラス目はスクープを使っています。
楽譜に書かれた音の少ししたからすくい上げるものです。
1コーラス目と同様、コーラス最後の4小節以外はほぼメロディの引用。
最後の4小節は少し複雑になっています。

3コーラス目

3コーラス目は今回の耳コピの中では一番”アドリブ”になっています。
それでも5小節目では一度メロディに戻り、9小節目からコーラスの最後までは再びアドリブに戻ります。

4コーラス目

4コーラス目、ソロの最後のコーラスです
3コーラス目とは変わりそのほとんどがメロディの引用です。

メロディだけでここまでできる

今回のソロの大部分はメロディを繰り返し演奏しているだけです。
『何か新しいものを得ようとする』ための耳コピとしてはあまりやりがいのないソロです。
同じBlue Bossaではデクスター・ゴードンを耳コピしましたがこちらは学びが濃いソロです。
(耳コピ楽譜参照: https://isseiec.com/transcriptions)

しかし、ケニー・ドーハムのソロは、ただ耳コピをすることよりも重要なことが学べます。
それはメロディだけでここまでできる、ということです。

Blue Bossaは先にも述べましたが非常にシンプルな曲です。
メロディのほとんどはスケールを下がるだけです。
それでもケニー・ドーハムは……

  • リズムを変える
  • 音を少しだけ変える
  • フラッタータンギングやスクープなどの特殊奏法を取り入れる

これらを組み合わせてしっかりとソロとして演奏しています。
ジャズの練習をしていると、もっと複雑、より高度な技法を取り入れて演奏することにとらわれがちです。
時にはシンプルに曲のメロディの引用をソロに取り入れることも非常に有効です。