世界で一番のトロンボーン奏者
世界で一番のトロンボーン奏者は誰か?
自分自身もトロンボーンを演奏します。
そしてトロンボーンの音源を聴き耳コピをしている自分としても『より良い演奏から学びたい』と常々思っています。
『世界で一番のトロンボーン奏者は誰か?』というのは重要な問題です。
それに関して先日この様なものを見つけました。
歴史上のトロンボーン奏者ランキング(英語): https://www.ranker.com/list/greatest-trombonists-of-all-time/ranker-music
ランカー.comという英語サイトより。
ランカー.comはざっくり言うと、誰でも投票できる何でもランキングサイト。
トピックは多岐にわたり、本や食べ物、買い物リストに芸能人などなど。
当然音楽もあります。
その中でのトピック『世界で一番のトロンボーン奏者は誰?』
それこそが、歴史上のトロンボーンプレイヤーランキングという訳です。
一応トロンボーンのトピックに関しては、
・ジャズトロンボーン奏者ランキング
・現在活動中のトロンボーン奏者ランキング
などもありますが、
・投票者数と投票数が歴史上のトロンボーン奏者ランキングには及ばない
・現在活動中のトロンボーンのみに限られる
・現在活動中にすでに亡くなっているトロンボーン奏者が入っている(投票のルールに合致していない)
この様な理由で歴史上のトロンボーンプレイヤーランキングが世界一のトロンボーンの方が信用が高そうです。
そのランキング内で私が勝手にピックアップしたものになります。
なお、このランキングは2019年10月時点のものです。
時期によってはランキングが変動する恐れがあります。
Bill Watrous(ビル・ワトラス)
上から見ていきますが、いきなり3位。
- 1位 J.J. Johnson(J.J.ジョンソン)
- 2位 Frank Rosolino(フランク・ロゾリノ)
- 3位 Bill Watrous(ビル・ワトラス)
ジャズにおけるトロンボーンは他のフロント楽器、サックスやトランペットに比べるとあまり知られていません。
その中でもJ.J.、ロゾリノはビバップ時代の『ジャズトロンボーンの開拓者』としての知名度が高く感じます。
万人に良く知られているという観点が、ランキングに影響を与えてしまうのは仕方がないことです。
J.J.は……当時は凄かったというのが私個人としての評価です。
ロゾリノはナチュラルスラーの鬼。
演奏技術は高いかつ独特で、トロンボーン吹きでも『彼が特別に好き』というファンもいます。
ジャズトロンボーン開拓者ランキングなら1位も理解できます。
しかし世界一のトロンボーンを名乗るならBill Watrous(ビル・ワトラス)の方がふさわしいのではないでしょうか?
(ワトラスのソロは3:45から)
早いパッセージも難なく吹きこなします。
ソロのライン、音選びに関してはあまり奇抜なことはやっていません。
ワトラス独自の特徴としては、トロンボーンとは思えない繊細で柔らかい音質。
音のレンジがめちゃくちゃ高い。
ビル・ワトラスが世界一のトロンボーンなら納得です。
Carl Fontana(カールフォンタナ)
個人的な推し1、Carl Fontana(カールフォンタナ)。
トロンボーン界隈ならドゥードゥルタンギングで有名な彼。
The Great Fontanaというフォンタナのリーダーアルバムより。
初めてこのアルバムを聴いたときは衝撃を受けました。
速いパッセージを楽々吹きこなすタンギング、ジャジーなフレーズ……演奏のどこを切り取っても学ぶところがあります。
トロンボーンをやっているなら必聴と言っても過言ではない。
アルバムよりいくつか耳コピをしたものもあるので以下を参考ください。
耳コピ置き場: https://isseiec.com/transcriptions
Joseph Alessi(ジョゼフ・アレッシ)
Joseph Alessi(ジョゼフ・アレッシ)
打って変わって、ジャズではなくクラシック。
トロンボーンをやっているならば、この名前を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
というのも、トロンボーンといえばジャズよりも吹奏楽の人が多いですからねー。
私の場合は高校の吹奏楽部にて先輩からアレッシを教わりました。
クラシックトロンボーンでは他にもクリスティアン・リンドベルイ(後に出てくる)が有名です。
私個人としては音圧が強いアレッシの方が好きですね。
以下はアレッシとリンドベルイ演奏。
どちらもFerdinand Davidのトロンボーンコンチェルトを演奏しています。
聴き比べてみるのは非常に面白いです。
Wycliffe Gordon(ワイクリフ・ゴードン)
個人的な推し2。
一番”好きな”ジャズトロンボーン奏者は誰ですか?
ジャズトロンボーン……すぐには答えらないです。
むしろ、一番を決めるのは無理。
候補を何人か上げるだけなら、その中にワイクリフ・ゴードンが入ります。
動画ではアレックス・アイルズ、ワイクリフ・ゴードン、マイケル・ディーズとソロを取っていきます。
この真ん中のワイクリフ・ゴードンの存在感!
演奏の特徴としてはトロンボーンの独自性が確立されています。
サックス奏者の様なスムーズな演奏ではなく、トロンボーン使った尖りのある演奏ががワイクリフ・ゴードンの強みです。
激しいソロが多いワイクリフ・ゴードンはお気に入りです。
Christian Lindberg(クリスティアン・リンドベルイ)
Christian Lindberg(クリスティアン・リンドベルイ)、世界でただ1人フルタイムのソロ・トロンボーン奏者。
すなわち、楽団に入らずとも、バンドを持たずとも、ソロ・トロンボーンだけで食べていける。
その時点ですでに世界一、ナンバーワンならずオンリーワン。
前述しましたが、私個人としてはリンドベルイよりもジョゼフ・アレッシの方が好きです。
しかしレパートリーを見た場合、リンドベルイは現代曲も演奏しています。
曲はモーターバイク協奏曲。
トロンボーンでバイクの音を模倣したりしています。
トロンボーンはこうゆうこともできるのかと、聴いてて新しい発見がありますね。
Curtis Fuller(カーティス・フラー)
Curtis Fuller(カーティス・フラー)……。
来ちゃったか……。
画像でわかるとおり、ランキングの中でマイナスのボタンを押しました。
そうです、個人的にカーティス・フラーは好きではないからです。
(カーティス・フラーのソロは2分49秒から)
演奏技術は高く、ソロもしっかり取ってます。
特にMoment’s Noticeはテンポが速く、コード進行も難しい曲です。
ただ……
一つ一つのフレーズが非常に短い!
フレーズをぶっつぶっつ切ります!!
選ぶアルバムが悪かったですかね?
長いフレーズをきれいに演奏しているアルバムもありますよ。
別にカーティス・フラーが好きな人を否定する訳ではありませんが。
個人的にカーティス・フラーは好きではないです。
Slide Hampton(スライド・ハンプトン)
個人的な推し3、Slide Hampton(スライド・ハンプトン)。
ジャズのトロンボーンの演奏は良くも悪くもトロンボーンっぽい演奏になりがちです。
理由としては音を変えるためにはスライドを動かす必要があるから。
演奏するフレーズがスライドの動きに適したものになってしまうんですね。
しかし、このスライド・ハンプトン!
トロンボーンのフレーズではなく、他の楽器にも通ずるジャズの言葉を話しています。
(スライド・ハンプトンのソロは6分48秒から)
ビバップのフレーズをトロンボーンに落とし込んで吹いているので、耳コピして学べることが非常に多い。
そしてスライド・ハンプトンはコードから外れて演奏するのが非常に上手い!
ソロの三小節目でアウトするフレーズから5小節目のEb7に7thの音で解決。
リンクの耳コピ楽譜は以下。
耳コピ置き場: https://isseiec.com/transcriptions
Arthur Pryor(アーサー・プライアー)
Arthur Pryor(アーサー・プライアー)。
パガニーニはバイオリンの超絶技巧。
さすればアーサー・プライアーは、トロンボーンのパガニーニ的存在と言えるでしょう。
演奏は素晴らしい!
しかし録音が古く音質が非常に悪い!!
それもそのはず、この録音は1901のもの。
是非とも今のレコーディング環境、もしくは生きていたら直接聴いてみたいトロンボーン奏者の一人です。
アーサー・プライヤーは演奏のみならずトロンボーンのソロ曲も数多く残しています。
Bob Brookmeyer(ボブ・ブルックマイヤー)
Bob Brookmeyer(ボブ・ブルックマイヤー)。
まず初めに、彼はトロンボーン奏者ではありません。
バルブトロンボーン奏者です。
トロンボーンという楽器はジャンルを問わず高い音のフレーズがよく出てきます。
それはトロンボーンの構造上高い音の方がスライドの動きが少なくなるため、早いフレーズが楽に演奏できるためです。
しかしボブ・ブルックマイヤーの楽器はバルブトロンボーン。
早いフレーズで中音域をガンガン使っています。
バルブトロンボーンだからスライドを動かす必要がありませんからね。
(通常のトロンボーンでは中音域はスライドの動きが大きくなる)
音の繋がりも非常に綺麗。
バルブトロンボーンだからボタンを押せば音が変わるからですね。
そして長いフレーズを一息で吹ききる。
学べるところはたくさんあります。
ボブ・ブルックマイヤーをスライドトロンボーンで演奏すればスライドの練習にも最適です。
でも投票はしません。
トロンボーンじゃないから。
でもバルブトロンボーンなら世界一。
リンクの耳コピは以下。
耳コピ置き場: https://isseiec.com/transcriptions
Fred Wesley(フレッド・ウェズリー)
Fred Wesley(フレッド・ウェズリー)。
ジャズトロンボーン奏者なのですが、これまでのトロンボーン奏者とはひと味違います。
フレッド・ウェズリーは何といってもファンク の色が強いです。
ビバップの早くスムーズにという方向性とは異なり、主張が強く尖っています。
トロンボーンファンクのジャンルなら世界一の逸材です。
耳コピ置き場: https://isseiec.com/transcriptions
まだまだ”世界一”
とりあえずランキング(2019年10月時点)で個人的に目に付いた10人を紹介してみました。
“世界一のトロンボーン奏者”と題してもここで上げた以外にもまだまだ優れたトロンボーン奏者はいます。
Conrad Herwig(コンラド・ハーウィグ)、 Michael Dease(マイケル・ディース)、Zoltan Kiss(ゾルタン・キス)……ランキングはまだまだ続きます。
日本人は一人も入っていませんし、個人的に好きなRay Anderson(レイ・アンダーソン)も登場しません。
それでもランキングを参考にして新しい”世界一”を探すのは面白いです。
知らないトロンボーン奏者の演奏を聴いてみましょう。
自分の中の世界一が変わるかもしれません。