トロンボーンで速いフレーズを演奏することは他の管楽器に比べると大変です。
トランペットやサックスならば、ボタンを押して息の流れを変えるだけで、音が変わります。
しかしトロンボーンの場合、スライドを動かし息の流れを変え、そしてタンギングをする必要があります。
他の楽器と違いトロンボーンで速いフレーズを演奏する上で難しいところは2つ。
- 速くスライドを動かすこと
- 速いタンギングをすること
今回はトロンボーンで速く演奏するため”速いタンギングすること”、その為のダブルタンギング、ドゥードゥルタンギングの練習方法を書いていきます。
ダブルタンギングとドゥードゥルタンギングの違い
まずはダブルタンギングとドゥードゥルタンギングの違いから。
とは言っても、これの厳密な違いを聞かれると正しい答えを返すのは至難です。
大学時代にプロのミュージシャンに聞いたのですが、返ってくる答えは違うからです。
- ダブルタンギングとドゥードゥルタンギングは同じ。
(ダブルタンギングをレガートでスムーズにしたのがドゥードゥルタンギング) - タンギングの発音で”da-ga da-ga”がダブルタンギング、”doo-dle doo-dle”なのがドゥードゥルタンギング。
- 下を口の中の4カ所で使う。シラブルは”ta-ka-ti-ki”。
etc…
ミュージシャンごとに違う答えが返ってきました。
ネットで検索しても同様で記事によって定義、説明の仕方が異なります。
自分が練習した結果、自分の中でのダブルタンギングとドゥードゥルタンギングの違いは……
- ダブルタンギングとドゥードゥルタンギングは本質的には同じ。
- ダブルタンギングをレガートにしてスムーズにする際にシラブルが”doo-dle doo-dle”というシラブルになる。
ダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)の練習
ただダブルタンギング(da-ga da-ga)を使ってもレガートにはならず、スムーズさを求められるジャズのソロではあまり参考になりません。
その為、ダブルタンギングをスムーズにしたドゥードゥルタンギングのシラブル(doo-dle doo-dle)を使った練習を書いていきます。
練習は”doo-dle doo-dle”の発音を”da-ga da-ga”に変えることでダブルタンギングの練習にすることもできます。
ダブルタンギングに慣れていない場合はまずそちらから練習してください。
練習用のpdf: Doodle Practice
ドゥードゥルタンギングの発音
最初は楽器を使いません。
口でシングルタンギング(dah-dah)とドゥードゥルタンギング(doo-dle)のシラブルを交互に発音します。
ドゥードゥルタンギングのシラブルは”doo-dle”ですが二つ目の”d”は発音しません。
その為、二つ目の”d”には括弧を付けています。
日本語の発音も”ドゥードゥル”ではなく”ドゥル ドゥル”です。
『ダダダー ダダダー ドゥルドゥー ドゥルドゥー……』
慣れていない間はただ発音するだけでも練習になります。
歩きながらでも発音するだけでもタンギングの練習をすることができます。
1. 1つの音の練習
ドゥードゥルタンギングのシラブルに慣れてきたら次は実際に楽器を使って同じことをします。
タンギングは全てレガート、ゆっくりなテンポでメトロノームを使って練習しましょう。
シングルタンギングとドゥードゥルタンギングが全く音に違いがなく出せるようにします。
速いテンポでいきなり楽譜いっぱいに16分音符で練習するのは推奨しません。
無理な演奏をしようとするが為に、変なクセが付いてしまう恐れがあるからです。
1-1が確実にできる様になったら次は音を増やしていきます。
ここまでできる様になると大分ドゥードゥルタンギングに慣れてきていると思います。
楽譜は全てFメジャースケールを使っていますが、違うキーで練習するのも効果的です。
上の3つができる様になったら、ステップ2の音を変える練習に進んでください。
おまけとして実際にソロで使われているものを参考にしたエクササイズを置いておきます。
1-Ex
画像は途中まで。
完全版の楽譜のpdfはこちらから。
この練習はジャズトロンボーン奏者、Delfeayo Marsalis(デルフィーヨ・マルサリス)のAutumn Leavesを参考にしたものです。
動画の2:39で1つの音(D)の連続タンギングが出てきます。
- タンギングの連続
- 曲の速さ
- アクセントの使い分け
これらの課題を全てクリアするのは難易度が高いです。
初めてすぐにできるものではありません。
少しずつ練習してタンギングに慣れていきましょう。
このソロの耳コピしたpdfは以下より。
耳コピ楽譜: https://isseiec.com/transcriptions
デルフィーヨ・マルサリスのソロ分析: https://isseiec.com/autumnleaves
2. 音を変える練習
1つの音の練習に慣れてきたら、次は音を変えながら練習します。
1つの音の練習と音を変える練習を交互に練習します。
ここで特に注意すべきことは2つ。
- “タンギング”と”スライド”の動きを揃えること
- “F-G”や”Bb-C”などの倍音の変わり目
初めのうちは特に2.に慣れる必要があります。
倍音の変わり目は息の流れを変える必要があり、スライドの動きも大きくなります。
初めは1つの音の練習よりもテンポを落とし正確性を高め、慣れてきたら少しずつスピードを上げていきます。
3つの音に慣れてきたら、こちらも音の数を増やします。
ステップ2もFメジャースケールのみ書かれていますが他の調にも変えて練習してください。
3. 実践練習
1.と2.で楽譜に書かれている練習は全て終わりです。
タンギング練習pdf: Doodle Practice
- 1.ではダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)に慣れる練習
- 2.ではダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)を使いながら、音を変える練習
次はタンギングの練習を離れて実際の音楽の中で練習していきます。
トロンボーンのソロを聞きながら演奏する
まずは実際にトロンボーンのソロの演奏を聞きながら一緒に演奏してみましょう。
以下のリンクにトロンボーンの耳コピした楽譜のPDFがあるので、それを参考に音源を聴きながら練習してください。
耳コピ楽譜: https://isseiec.com/transcriptions
初めから100パーセントのスピードで演奏するのは非常に困難です。
まずはスマホのアプリを使って音源のスピードを落として始めます。
スピードよりも先に正確性、そして細かいニュアンスを揃えることを意識してください。
慣れてきたらスピードを少しずつ上げていきましょう。
オススメはドゥードゥルタンギングのパイオニアであるCarl Fontana(カール・フォンタナ)。
アルバムのThe Great Fontanaはどのソロもタンギングが滑らかでスムーズです。
アルバムThe Great Fontanaの”I thought about you”の耳コピ譜より。
この曲のテンポは130ほど、アルバムの中の他の曲と比べそれほど速くはありません。
しかしソロの18小節目で16分音符のフレーズが出てきます。
このフレーズを繰り返し何度も聴きながらドゥードゥルタンギングを練習するのは効果的な練習方法です。
カール・フォンタナのソロ分析: https://isseiec.com/carlfontana
全ての音をダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)で演奏する
ダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)を上手くなるためにはどうすれば良いか?
その答えは簡単です。
ダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)を使えば上達します。
使えば使うほど上達します。
逆に使わなければ上達することはありません。
それなら……
全ての音をダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)で演奏すれば良いんです。
動画は英語。
お気に入りのトロンボーン奏者兼ユーチューバーのPaul The Trombonistより。
プロのトロンボーン奏者Steve Armour(スティーブ・アーマー)との対談。
5:14から。
When you are playing in the ensemble, and it’s not a really critical situation like just the rehearsal and so on…
Double-tongue everything! Whatever the volume and whatever the tempo…
I used to do that in all my rehearsal in grad school. I double tongued… literally every notes.合奏中、練習などの本当に重要な状況でない場合、音量や速さに関係なく全てダブルタンギングを使いなさい。
自分は大学院の時のリハーサルでそうやっていた。文字通り全ての音でダブルタンギングしていた。
全ての音をダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)で演奏すれば良いんです。
これを聞いてからは自分も合奏の間はアクセント、音量、曲の速さに関わらずダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)。
ダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)を完璧にするということは、それを使ってアクセント、音量、曲の速さに関わらず演奏できるということです。
もしもダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)でできないなら、そこは自分の弱点、要練習ポイントです。
全ての音をダブルタンギング(ドゥードゥルタンギング)で演奏できるようにしましょう。
タンギングができる様になったら次は速く演奏する為のスライドテクニックです。