ジャズのアドリブの引き出しを増やす/エンクロージャー

トロンボーン

ジャズの耳コピをして気がつくこと……

カール・フォンタナ(Carl Fontana)のAlwaysより。
耳コピ楽譜: https://isseiec.com/transcriptions

エンクロージャーが非常に上手い!

今回はジャズのアドリブの引き出しを増やす方法、エンクロージャーについて書いていきます。

エンクロージャーとは

エンクロージャーとはそもそも何でしょうか?
英語の日常会話にてエンクロージャー(enclosure)という単語を目にすることはまずありません。
日本語へ直訳すると、”エンクロージャー”は家の柵、お城の城壁など”囲い込み”に類するものが挙がります。

音楽のエンクロージャーは以下の通りです。

最初の例で出した赤い丸と矢印(↓)。
矢印(↓)の音が丸の音で囲まれています。

  • 14小節目頭の”B”の音、直前で”B”の上の”C”と”B”の下の”A”に囲まれています。
  • 15小節目の三拍目の”C”の音、上の”D♮”と下の”B♮”に囲まれています。
  • 16小節目の頭の”Db”、”Eb”、”D♮”、”C”に囲まれています。

これが音楽でいうエンクロージャーです。

そしてエンクロージャーはジャズのアドリブのみならず、ありとあらゆるジャンルの音楽で登場します。

例えば世界中で有名な”ドレミの歌”。
“ソ”の音までは音が変わる毎にエンクロージャーが使われています。
この様に音楽を聴けば、エンクロージャーというものは至る所にあふれています。

なぜエンクロージャーがよく使われるのか?

ではなぜエンクロージャーがよく使われるのでしょうか?


先ほどのドレミの歌。

最初の2小節のコードはCメジャー。
3小節目でG7にコードが変わります。
この直前で”C”と”E”の音でエンクロージャー、囲い込みが行われています。

そして3小節目で”D”の音へ。
“D”の音はG7のコードの音(“G”,”B”,”D”,”F”)の中の一つです。
そして直前の”C”と”E”はコードの中には含まれていません。

G7の直前でコードにはない”C”と”E”で囲うことにより、”D”の音で”ここでコードが変わった”ということを強調することができます。

音楽は猫がピアノの上を歩いてできたものではありません。
メロディとコードの組み合わせが非常に重要です。

そしてそれはジャズのアドリブ同じです。
アドリブだからといって、めちゃくちゃに音を出している訳ではありません。
曲のコードに基づいて演奏しています。

エンクロージャーはメロディでコードの変わり目を強調することができます。
このテクニックはコードに基づいて演奏するアドリブにも非常に有効なテクニックです。

エンクロージャーの練習

実際にアドリブで使えるようにする為に、エンクロージャーの練習に移っていきます。
エンクロージャー練習pdf: Enclosure Practice

スケール音のエンクロージャー

2つの音から始めます。
最初はスケールの中の音を使ったエンクロージャーです。

1-1

四分音符の音を八分音符の音でエンクロージャーしています。
音は全てFメジャースケールの中の音です。
スケールの上昇では上下の囲い込み、スケールの下降では下上の囲い込みです。

スケールと半音下のエンクロージャー

次は囲い込む音に対して上の音はスケールの音、下の音は半音下のエンクロージャーです。

1-2

スケールの中の音と半音下の音、これら二つを考えなければならないため、最初のエンクロージャーより少し難易度が高いです。

半音階のダブルアプローチ

半音階のダブルアプローチ。

1-3

これは囲い込みがされていないのエンクロージャーではありません。
アプローチノートを使っています。

スケールの上昇では全音上から半音2つ、スケールの下降では全音下から半音2つでアプローチしています。
エンクロージャーと同様にアプローチノートもコードの変わり目を強調することができます。
ダブルアプローチを置いたのは、次の3音のエンクロージャーを練習するためです。

3音のエンクロージャー

3音のエンクロージャー。

1-4

スケールの上昇ならスケールで上の音からダブルアプローチから半音下の音。
ダブルアプローチで下がれない場合は下のスケール音から上昇でダブルアプローチ。
スケールの下降では場合はそれを逆にしたパターン。

間にアプローチを使っていますが、当然これもエンクロージャーです。

初めは難しく感じるかもしれませんが、練習すればできる様になります。
ただし、

アドリブで自由に使える様になるためにはもう少し練習が必要です。

全パターンを八分音符で

実際のアドリブで使える様にする為には、意識して使っているレベルでは咄嗟に使うことはできません。
意識せずとも使えるレベル、完全に自分のものにしてこそ、初めて自分のアドリブに自由に取り入れることができます。

そんな訳でもう一つ上のレベル。
全パターンを八分音符でやってみましょう。

スケール音のエンクロージャー
2-1

スケールと半音下のエンクロージャー
2-2

半音階のダブルアプローチ
2-3

3音のエンクロージャー
2-4

エンクロージャーを使おう

ここまで出てきた練習は全てFのキーで書かれていますが、当然ながら全部のキーで練習してください。
慣れてくれば全パターンの八分音符、これら全てを12のキーでやるのに10分も掛からずできる様になります。
練習始めの音出しの時に、少しずつ練習してエンクロージャーを自分のものにしていきましょう。
すると意識をせずとも自分のアドリブでエンクロージャーが出てきます。

エンクロージャーを使ってアドリブの引き出しを増やそう!!

エンクロージャー練習pdf: Enclosure Practice