ジャズトロンボーン分析/ボブ・ブルックマイヤー(Bob Brookmeyer)-There will never be another you

楽器の練習

There will never be another you

ボブ・ブルックマイヤー(Bob Brookmeyer)のアルバム、The Modernity of Bob Brookmeyerより、There will never be another you。

There will never be another youもAutumn Leavesと同じく、『ジャズをやっているならだれもが知っている』という地位を築き上げた有名曲。
ジャムセッションではAutumn Leavesよりも演奏される機会が多いような気がします。

作曲はHarry Warren、作詞がMack Gordon。
元々は1942年、アメリカの映画Icelandの為に作られた曲です。

コード進行

曲の進行はABAC。

  • トニックであるEbから始まり、関係調であるC-へ。

|EbM7 |EbM7 |D-7b5 |G7 |C-7 |

  • Aセクションの終わりからB,Cセクションの初めでii-Vの進行でAb。

|Bb-7 |Eb7 |AbM7 |

  • そのAbからバックドア進行でEbに戻ってきます。

|AbM7 |Db7 |EbM7 |

  • こからターンアラウンドでAに戻るといった進行です。

基本的にEbから大きく離れることはありません。

ボブ・ブルックマイヤー(Bob Brookmeyer)のソロ

ボブ・ブルックマイヤー(Bob Brookmeyer)の分析の前に言っておくことがあります。

の楽器はトロンボーンではなく、バルブトロンボーンです。

JazzWaxというサイトにインタビューが掲載されています。
バルブトロンボーンの馴れ初めや、元々スライドトロンボーンが好きではなかったという興味深い内容もあります。

インタビュアー『なぜスライドトロンボーンが嫌いなんだい?』
Bob『スライドトロンボーンが好きな人がいるのかい?サックスはバンドの前列にいて女の子にモテモテ。後方のトランペットはバンドをグルーブさせてお金持ち。トロンボーンはただ真ん中に座って隠居生活(笑)。女の子もお金も手に入りゃしない』

JazzWaxのインタビューリンク(英語): https://www.jazzwax.com/2009/06/interview-bob-brookmeyer-part-1.html

なかなかひどいことを言っています。
これが原因かは不明ですが、彼のスタイルはトロンボーンっぽくはありません。
当然です。

トロンボーンじゃないんだから!

彼のソロの耳コピ楽譜は以下のリンクにPDFがあります。
耳コピ楽譜: https://isseiec.com/transcriptions

フレーズが長くスムーズ

まず第一にボブ・ブルックマイヤーの特徴は1つのフレーズが長くスムーズであること。
ジャズトロンボーンで一つのフレーズを長く演奏する奏者はあまりいません。


73小節目、Bセクション丸々使ってAセクションに戻るフレーズ。


111小節目、Bセクションの終わりからAセクションをほぼ丸々使ったフレーズ

ボブ・ブルックマイヤーのフレーズはかなり長い。
更に調の音の間に♯やbを入れソロのラインをスムーズにしています。

スケール

そして使われているスケール

フレーズをスムーズにする上でビバップスケールも使われています。

Ebメジャーのビバップスケールです。
EbメジャースケールにB♮を足して8音のスケール。
ソロの中でC-B♮-Bbという音の組み合わせが数多く出てきますが、そのほとんどがEbメジャービバップスケールの一部として出てきます。

ビバップスケールに関してはこの本に詳しく乗っています。
今回はボブが使っているのはメジャービバップスケールですが、ドミナント/マイナービバップスケールなどもあります。
耳コピする上で重要なことはそのスケールの使い方です。

画像ではG7のコードにDからEbメジャービバップスケールで上がっていっています。
このような使い方は教則本ではまず出てきません。
なぜならあまり一般的な使い方ではないからです。

スケール一つとっても演奏者の扱い方で全く異なります。
理論ではない、本物の音楽から学べる、これも耳コピの利点です。

他にもペンタトニックスケール、

ペンタトニックスケールからのディミニッシュスケール。

スケールや曲のキーの中で演奏することにより、スムーズなソロを作り出しています。

替えポジション

一度言いましたがもう一度言います。

彼はトロンボーンではありません。

スライドトロンボーンで彼のソロを演奏する場合は当然スライドを動かす必要があります。
そしてそれは簡単ではありません。
曲のテンポが速い上に、使われている音が低いからです。

通常トロンボーン奏者のソロは早いフレーズを演奏するときは高い音になる傾向があります。
高い音の方が倍音の都合上、スライドを大きく動かす必要がないからです。
しかしボブの演奏はバルブトロンボーン。
速かろうが、低かろうが、どんなフレーズでも指のボタンで音を簡単に変えることができます。

なので彼の演奏をスライドトロンボーンで演奏する際には、特に替えポジションを練習する必要があります。

普通のトロンボーンでもサブポジションが当然出てきますが、実際にスライドで演奏してるだけあって非常に扱いやすく理に適っています。
しかし、バルブトロンボーンの場合は違います。

番号はスライド番号。
通常ポジションだとこんな感じ。
替えポジションを使うと……

自分が演奏する上では1ポジションと3/4ポジションが交互にスライドを動かすのはあまり好きではありません。
それを最低限にするため、変えポジションを使ってスライドの動きを最小限、もしくは一方方向に動かして音が出せるように調整しています。

サブポジションは早いフレーズを演奏する上で非常に便利です。
その反面、音程が合わせにくくなったり、音色が曇ったり、コントロールが必要な技術でもあります。
また人に寄ってどの程度替えポジションを採用するかも異なります。

ソロで使えるようにするためには練習が必須です。
替えポジションの練習についてはこちらから。