ウディ・ショウ(Woody Shaw)のソロ分析/サイドスリッピング

楽器の練習

こちらでボブ・ブルックマイヤーのソロ分析の記事を書きました。

ボブ・ブルックマイヤーのソロ分析: https://isseiec.com/bobbrookmeyer

そのときの曲は”There will never be another you”。
今回の分析はウディ・ショウ(Woody Shaw)のSolidというアルバム
曲は同じく”There will neber be another you”。
バルブトロンボーンとトランペット。
音の高さに違いはあれど二人の演奏方法は全くもって異なるものです。

ウディ・ショウ(Woody Shaw)の”There will never be another you”のソロ分析を書いていきます。

There will never be another you

曲の説明はボブ・ブルックマイヤーの方でやったのでそちらを参考にしてください。

ボブ・ブルックマイヤーのソロ分析: https://isseiec.com/bobbrookmeyer

ウディ・ショウ(Woody Shaw)

好きなトランペット奏者は誰か?
この様を質問を受けた場合、自分は真っ先にウディ・ショウを上げると思います。

しかし、悲しいことに彼の評価は他のトランペットに比べると評価されていない印象があります。
特に日本ではほとんど知られていないプレイヤーなのではないでしょうか?
聴く人によっては彼の才能を評価する声もありました。

“Now there’s a great trumpet player. He can play different from all of them.”

すごいトランペット奏者がいるんだ。彼は他の誰とも違う演奏をする。
-Miles Davis(マイルズ・デイビス)

言わずと知れたジャズ界のレジェンド、マイルズ・デイビスにもこのように言われています。
ウディ・ショウ.comにはその他のミュージシャンからの評価も記載されています。

ウディ・ショウ.com: https://woodyshaw.com/pages/quotes-about-woody-shaw

ウディ・ショウのソロ

マイルズの言葉の通り、ウディ・ショウは他のどのトランペット奏者とも違ったユニークな特徴があります。
そしてそれはトランペットのみならず他のどのジャズミュージシャンとも違った音がします。
楽譜のPDFは以下のリンクに置いてあります。

PDF楽譜: https://isseiec.com/transcriptions

間の取り方が非常に上手い

ウディ・ショウのユニークな特徴の一つはそのソロの組み立て方。
特に間の取り方が非常に上手い。

長いフレーズを吹いて、長めに休符を入れる。

それを繰り返しています。


21小節目の休符。


37小節目の休符。
例2つ上げましたがソロを通して何度も出てきます。

フレーズの間の全音符(四分音符4つ)以上の休みを取ることが多いです。
参考までに同じく耳コピしたボブ・ブルックマイヤー聴いてください。
ソロの間はほとんど休みなく吹いているように聴こえます。

因みにボブ・ブルックマイヤーはソロを通して全休符以上の休みは3カ所でしか取っていません。

  • ボブ・ブルックマイヤーのソロ: 3コーラスで3カ所。
  • ウディ・ショウのソロ: 2コーラスで9カ所。

全休符より長い休みに関してはボブ・ブルックマイヤーは一つもありません。

休符を多く取っている方が凄い演奏ということはありません。
ウディ・ショウの特徴として、長めの休符も自分のフレーズの一部にしています。

サイドスリッピング

ウディ・ショウのユニークな特徴をもう一つ。
彼のソロを聴いてみて飛び抜けて聴こえてくる部分はありませんでしたか?


29小節目、コーラスの終わりからAセクションに戻る箇所。


61小節目、同じくコーラスの終わりからAセクションに戻る箇所。

この曲に限らず、ウディ・ショウの演奏を聴けば、このように”飛び抜けて聴こえてくるフレーズ”が随所にあります。
ここでは彼の演奏をユニークたらしめているサイドスリッピングというテクニックが使われています。

サイドスリッピングとはスケールパターンをキーの半音上もしくは半音下で繰り返し再び元のキーに戻るというテクニックです。
百聞は一見にしかず、見た方が早いです


この様にEbから隣(E♮)へスリップし、再び元のキー(Eb)にスリップすることを繰り返しています。
二つ目のフレーズも同様です。


どちらのフレーズもEbとE♮を行き来しています。
そしてこれらは同じようなパターンを繰り返しています。


最初のフレーズの繰り返しの箇所を青と緑の括弧で括りました。
パターンごとに音の度数は違いますがパターンの形は同じです。

例えば青の場合は4音のパターン、”up-down-down”で構成されています。
そして途中で青のパターンを含む形で緑のパターン登場します。


2つめのフレーズ、青い括弧で囲った箇所が繰り返し。
これは1番目のフレーズの青括弧と全く同じパターンです。

この様に同じ形で音程が異なるパターンを演奏するテクニックをメロディックディスプレースメントと言います。
メロディックディスプレースメントは音程が異なっていても”up-down-down”の様に繰り返し演奏されると人間の耳はすぐに”同じようなフレーズが繰り返されている”と認識することができます。

サイドスリッピングは一朝一夕でできる様になるテクニックではありません。
練習が必要です。