ジャズトロンボーンCarl Fontana(カール・フォンタナ)のソロ分析/ドゥードゥルタンギング

楽器の練習

アルバム、”The Great Fontana“より”Always”。
ジャズトロンボーン、カール・フォンタナ(Carl Fontana)のソロ分析です。

アルバム”The Great Fontana”はカール・フォンタナ初めてのリーダーアルバム。

アメリカの大学でジャズの授業を取っていたとき、このアルバムを紹介され、ソロの耳コピしてくることが宿題として出されました。
それがこのAlways。
人生初の耳コピです。

Always

AlwaysはIrving Berlinが作曲。
彼の作曲ではCheek to Cheekという曲が有名です。
しかしAlwaysはセッションでは(全くと言えるほど)聴くことはありません。

フォンタナは4拍子(4/4)で演奏していますが、3拍子で演奏されることもあります。


曲の構成は8小節が4つのABCD。
32小節で1コーラスです。
Bセクションで3度上のCへ移調するのが少し注意が必要です。
“A”と”C”が似ていますがそれぞれ”B”と”D”へ繋ぐために少し異なります。

カール・フォンタナのソロ

ソロのPDFは以下のリンクより。
耳コピ楽譜: https://isseiec.com/transcriptions

カール・フォンタナの何がそこまですごいのか?

カール・フォンタナとそれ以前のトロンボーンを聴き比べれば一発でわかることです。
まず初めにフォンタナのソロはスピードが速い。
そしてその速さをキープしつつ、どんなに速くなろうとも非常に滑らかな演奏をします。
秘密はフォンタナのタンギングにあります。

ドゥードゥルタンギング

フォンタナのスムーズなタンギングは”ドゥードゥルタンギング”と呼ばれます。
J.J.ジョンソンはトロンボーンで初めてサックスについて行けるトロンボーンプレイヤーとして周知されました。
そこからカール・フォンタナはトロンボーンの技術をもう一歩先に進めています。
それがドゥードゥルタンギング。

通常トロンボーンはタンギングの発音で”tah(た)”もしくは”dah(だ)”を使います。

スピードが速くなると今度はダブルタンギング。
“tah”を使っていれば”ka”、”dah”を使っていれば”ga”を使うと思います。

ドゥードゥルタンギングはdoo-dleを使います。
発音は”doo-(d)lu”、”どぅ-る”です。

ドゥードゥルタンギングはダブルタンギングの派生です。
ダブルタンギングを極限までレガート且つスムーズにするとドゥードゥルタンギングになります。
発音の違いで息の使い方、音の切れが変わります。
試しに手を口の前にかざし、息を吐きながら以下の発音をしてみてください。

  1. 『たかたかたかたか……』
  2. 『だがだがだがだが……』
  3. 『どぅるどぅるどぅるどぅる……』

息の量を多く、長く、そして連続して一定に保てるのはどれでしたか?
3.の『どぅるどぅるどぅるどぅる……』です。
この発音を使ったタンギングドゥードゥルタンギング。
発音を変えること、速さをキープしたまま滑らかな演奏が可能となります。

ドゥードゥルタンギング(ダブルタンギング)の練習方法の記事を書きました。
下のリンクを参考にしてください。

トロンボーンで速く演奏する/ダブルタンギング、ドゥードゥルタンギングの練習

ジャズのボキャブラリーとエンクロージャー

ジャズはしばしば言葉に例えられることが多いです。
周りの会話(他の楽器)を聴きながら自分の言いたいことを主張(演奏)する。
その為には当然、”ジャズ”という共通の言語を話す必要があります。
コードやスケールが文法ならジャズのフレーズは単語(ボキャブラリー)です。

耳コピはただ音源を楽譜に起こすという作業ではありません。
ジャズのボキャブラリーを増やすという目的もあります。

1.

1小節目でAbビバップスケールのフレーズ(Eb-E♮-F)。
間のBb-7 Eb7はii-Vとしてではなく、Abmaj7として流しています。

2.

コードが変わる小節の頭でコードトーンを踏んでいます。
矢印の部分はエンクロージャー。
Eb7ではEbペンタトニックスケール、Abmaj7ではAbメジャービバップスケール(Eb-E♮-F)も使われています。

3.

Dm7でCメジャースケールで上がっていって、エンクロージャーでG7へ。
G7ではドミナントビバップスケール(G-Gb-F)が使われています。

4.

2拍ごとのii-V。
Abmaj7のメジャービバップスケールのフレーズは2.で既に出ています。
この直前にエンクロージャーを置いています。

5.

Cm7の終わりからアルペジオで上がってF7の頭でb9。
そこからは毎小節エンクロージャーが出てきます。
Bbm7のフレーズは4.で出てきたのと同じものです。
4.ではエンクロージャーでAbへ、こちらはエンクロージャーでBbを置いています。
結構長めのリックですが、1小節ごとに区切っても全てそのまま使えるフレーズです。

おわかりの通り。
フォンタナは『これでもか!!』と言うほどエンクロージャーを多用します。
エンクロージャーの練習に関しては以下のリンクにて。

ジャズのアドリブの引き出しを増やす/エンクロージャー

トロンボーンはフォンタナに学ぼう

速くスムーズ、そしてジャズの言語も豊富。
カール・フォンタナには聴いて、耳コピして、演奏して……学べる部分がたくさんあります。
他にもフォンタナの耳コピをしています。

耳コピ楽譜: https://isseiec.com/transcriptions

フォンタナに習い、ジャズトロンボーンを学ぼう!!